2025年5月 作品 暦日下町

孝男  一幹  麻紗 篤樹  恵美子 佐恵子 富美子 竜之介 一穂 


◇道山 孝男

青年の主張そのまま青嵐

遅れても威風堂々八重桜

人生の中の嬉しさ花疲れ

山里を染める夕焼け夏にいる

打ち返す波の気だるさ春の暮

◇萩庭 一幹

住み古るや路地の詰まりの瓜の花

青嵐海底トンネル潜り来て

山法師炭焼窯のそのままに

若き日へ会ひに戻りぬ青嵐

大寺や甕ひとつ置く蕗の海

◇渋谷 麻紗

観音へ登る回廊風薫る

鎌倉の釈迦牟尼佛へ青嵐

ニコライの鐘の響きも五月かな

心字池わがもの顔の残り鴨

学問所跡や実梅の当たり年

◇遠藤 恵美子

温泉の貼り紙けふは菖蒲湯と

夏夕べ田水にゆるる家の影

風鈴に風やはらかく寺の空

夏野ゆく今日は真白きスニーカー

青あらし社の大樹は動じない

◇飯塚 佐恵子

山笑ふ風のベンチでミニ句会

お目当てのカフェ満席街薄暑

一日の疲れをほぐす夕牡丹

天の師へ伝へたきこと桐の花

繋がれし山羊の一声青嵐

◇松尾 龍之介

馬術部の厩も北の窓開く

のどけしやラジオの時報尻上がり

燕来る屋根の平らな屋形船

花散るや半ば口開け左大臣

御手洗の歯朶豊かなり青嵐

◇世古 一穂

神沼の緑へ藤のふぶきけり

万緑の底ゆく同行二人かな

緑なす山の湖鎮もれり

分け入りて青葉の山や光満ち

大欅翼休めし暑さかな


2025年4月 作品 暦日下町

孝男  一幹  麻紗 篤樹 純栄 

恵美子 佐恵子 富美子 龍之介 一穂 


◇道山 孝男

野は既にパッチワークの花筵

春深し風の詩を聴く散歩道

青春を甦さする春の風

遠足のおむすびはおふくろの味

春愁や生きることにも戸惑ひて


◇萩庭 一幹

縄文の野に遠足の手弁当

鳥雲に混沌の世を小さくして

路地伝ひ花の奥なる毘沙門堂

鬼平の架けし大橋花の雲

未来にも未来ありきか鳥曇り


◇渋谷 麻紗

旅先の雪にとまどふ四月入り

降り癖の花の雨なる西の京

遠足の子らに出会ひし飛鳥寺

苔の上に紅一点の落椿

一途なる花の命を傷みけり


◇柳篤樹

待花や鳥影薄き里の春

長瀞の渦に巻かるる花筏

一片を玻璃に名残りの花吹雪

生り年や萼の鳶色豊後梅散る

遠足の黄色の帽子手を上げて


◇遠藤 恵美子

寺で逢ふ笑顔まぶしき桜人

初音聞く村への道は工事中

お社で記念撮影花の昼

能管の一声春の能舞台

涅槃西風羽衣を舞ふ能舞台


◇飯塚 佐恵子

いつの間に昭和百年春の雪

春の雨膝に暦日終刊号

江ノ電の車窓に春の水平線

熊出たと防災無線青き踏む

遠足の弁当へ鳶急降下


◇安保 富美子

ごうごうと芽吹く銀杏や墓地の空

花辛夷こころの白さ問はれしか

初桜ざらつく髪をととのへて

彼岸の帰路夫の生地を歩きけり

三椏は鈍き日差しに黄をかえし


◇松尾 龍之介

椿落つ苔むす道の水源地

踏切のレールの隙間はこべ咲く

燕来る川浪荒き日なりけり

遠足のリュックの匂ひどれも同じ

春めくやカルピス色の走り雲


◇世古 一穂

春光をくるり巻き込む鉄の屑

うららかや飴屋の指に鳩うまれ

遠足の弁当にぎやか桜舞ふ

打ち寄せしハングル文字や春渚

毘沙門へ極楽橋や青葉光


2025年3月 作品 暦日下町

孝男  一幹 盛人 麻紗 篤樹 純栄 恵美子 佐恵子 富美子 龍之介 一穂


◇道山 孝男

鳥の声運ぶ窓際桜東風

流れたき方に流るる春の水

水温む予定ポツポツ入りをり

腰軽く動ける朝春兆す

道長の月となりたる春満月

◇萩庭 一幹

みくまりの律の生るる芹の沢

落椿遠流の島の嘆き文

日のかけら水面に残し鴨帰る

水温み艫綱ゆるむ船溜まり

風の階昇り詰めたる北帰鴨

◇渋谷 麻紗

日脚伸ぶ友と長居の喫茶店

新宿の不夜城に降る春の雪

人声に寄り来る鯉や水温む

図書館の窓辺の明かし花ミモザ

露天湯や春曙の熊野灘

◇柳篤樹

ポリ袋はためく梢春一番

諍いの後の黙やリラの花

菜の花や母の唄ひし声のする

盆梅の一枝蕾の二つ三つ

水温み堰に溢るる光かな

◇遠藤 恵美子

阿波富士のふもとの村の梅祭

客を待つ一輪挿しの椿かな

一輪の椿手折るを惜しみけり

梅林の小道を一人空清し

寺参り乙女椿の初々し

◇飯塚 佐恵子

心地よき列車の揺らぎ春の雲

放たれる刻へ全山杉花粉

山の日に群れゐてひとり節分草

下萌や山羊小屋空つぽのまんま

水温む鴨羽繕ふ船着場

◇安保 富美子

細胞のひとつひとつに春の風

鳴き砂のノスタルジアの春の海

春の川心の虚ろ満たしゆく

薔薇芽吹く砦のやうな棘に触る

残る茣蓙さくら隠しの雪となり

◇松尾 龍之介

春寒し先の削げたる塗りの箸

立雛の男雛大きく手を拡げ

向こうから視界を過る春の猫

白壁を縦に穢して春時雨

一点に春日を返す天文台

◇世古 一穂

研ぐ米の指先ほのか水温む

春の夜のグラスに指紋うつりけり

捨て石に腰を預けて梅日和

幼児語ひらひらふゆる蝶の昼

水温む鴨の反り身の芸達者

小田原城


通信句会 なかま

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