暦日句会
2022.7 通信句会 兼題『睡蓮』
モネの絵の記憶をたどる夏帽子 恵美子
若々しく、みずみずしい感性の一句。
モネが光の印象画家と呼ばれ、日本の浮世絵から多大な影響を受けた。
フランスのモネの庭を再現した庭が、日本の四国高知の北川村に在る
のも納得がゆく。
『夏帽子』は絵画の中の夏帽子か、実際に被っていた夏帽子か。
睡蓮の光景に夏帽子を被った婦人がいたような気がする。或いは
夏帽子を被る作者自身の事かも知れない。
まさに、眼前の睡蓮の光景が絵画の世界と混然となっているのだ。
睡蓮の景色とモネの絵画は一体となる存在感が定着してしまった。
◇一木 一木
睡蓮の飛び石伝いに池三つ
相模湖に湖面すれすれ夏燕
夾竹桃彼方の山に雲は無く
聞き役に今は徹してビールかな
夏空やただ行く先はショッピング
◇道山 孝男
ローカル線行くや青田に染まりつつ
枇杷の種大き過ぎるが口惜しく
七月の色は青なり若さなり
水が水押して流るる梅雨出水
未草開いて水を華やげる
◇萩庭 一幹
夏落葉山盛り憩ふ猫車
水の彩幾重にかさね芙美子の忌
炎天のしじまを裂きて孔雀啼く
つばめの巣留守のままなる夕焼空
片陰に立て掛け熊手竹帚
◇原 盛人
炎熱や前立腺に弾撃たる
青鷺の歩み水面に波立てず
睡蓮やまた浮かびこよウクライナ
仙人掌の花の血潮は真白なり
凌霄花のもとに燕のホバリング
◇柳 篤樹
風止みて逆さ燧ケ岳に未草
朝まだき竿やはらかに梅落とす
風途絶え風の恋しき小判草
凡庸も生きやうならん芙美子の忌
不条理の腐草蛍となる日まで
◇松田 純栄
(寂聴を悼む)
瀬戸内春美に会ひ昔よパリ薄暑
楽しけれ冷麦啜る誕生日
初恋や路地に並んでかき氷
人の世を離れ睡蓮見てゐたる
滴りのしずけさ戦場を思ふ
◇渋谷 麻紗
坪庭の甕に覚めたる未草
学問所跡の実梅の累々と
底紅の一花活けたる茶室かな
草津まで滴る山を両窓に
高原の日をちりばめし独活の花
◇遠藤 恵美子
モネの絵の記憶をたどる夏帽子
睡蓮にしづかなる風モネの庭(高知北川村)
空広くヨットの傾ぐ土佐の海
街角はブルーグレイや梅雨深し
夏来るけふ海に沿ふ奈半利線(高知)
◇飯塚 佐恵子
蛍の夜橋にちょこんとハクビシン
睡蓮や釣り糸垂れて眠りをり
梅雨深といふ間もなくて梅雨明けぬ
栗毛馬まだらに染める夕立かな
軒下の甕よりすくと蓮の花
2022年6月 作品
一木 孝男 一幹 盛人 麻紗 篤樹 純栄 恵美子 佐恵子
暦日下町句会 六月
◇一木 一木
滝仰ぎ祈る女や半夏生
紫陽花の彩り運ぶお鷹道
鎌倉や挨拶に替えて花菖蒲
竹林にほたるは星座描きおり
遠足や新任教師先頭に
◇道山 孝男
月残る真昼の空や半夏生
地を吸って蛇行運転始まる蚊
一行で伝えるメール走り梅雨
気持ちまで濡らさぬものや夏の雨
濡れ縁に後ろ姿や青時雨
◇萩庭 一幹
蝶の旅あるかなしかの風に乗り
人力車かすめてゆきぬ夏つばめ
夏鴨の雨に打たるを潔し
いとけなき早苗田映す山の嶺
眼の疲れ森に癒やしぬ半夏生
◇原 盛人
夕日落つ東京湾の半夏生
お互いに飛びのきて見る蜥蜴かな
スカイツリーのもとに縺るゝ夏雀
いざ闘鶏のかうかうとした瞳かな
采配蘭やSMSは乱れけり
◇柳 篤樹
(尾瀬)小高きに長蔵の墓半夏生
薄紅は昨夜の名残や月見草
梅雨の入り樺道子の逝きし朝
濁世なほ楽しみもあり花卯木
閉館の岩波ホール梅雨寒し
◇松田 純栄
海青く名残の薔薇に囲まるる
木洩れ日を浴び鎌倉大河ドラマ館
あぢさゐや駆け込寺の閉ざされて
杖ついて巡る鎌倉半夏雨
戦争もコロナも去らず梅雨に入る
◇渋谷 麻紗
学び舎へ未央柳の坂の路
南風の強き都心の梅雨入かな
睡蓮の白き一花や放生池
十薬の花の群たる孔子廟
夫の忌を修すや細き半夏雨
◇遠藤 恵美子
風青しメタセコイヤの大樹かな
花文字の名前の刺繍ハンカチに
散策路一列で行く半夏雨
走り梅雨訃報の便り届きけり
渓流のひびきにひらく岩躑躅
◇飯塚 佐恵子
反芻の山羊の横顔走り梅雨
塞がれし井戸に息抜き半夏生
空耳のごと真夜中の時鳥
栗の花匂ふ川辺の古墳群
ひと雨に紫陽花の色兆しけり
2022年4月 作品
一木 孝男 一幹 盛人 麻紗 篤樹 純栄 恵美子 佐恵子
暦日下町句会 四月
◇一木 一木
谷戸を出て水のやわらく桜花
芭蕉庵主さながらの天道虫
春寒し中山道の宿の土間
高々と雲雀の声の切通し
明け放す空の青さや春惜しむ
◇道山 孝男
春の潮空を汲み入れまた膨る
鈍行のスローな景色旅遅日
清明や畑もすなる深呼吸
通り雨音なく過ぐる竹の秋
春惜しむ時の流れに立ち止まり
◇萩庭 一幹
花の島かつて人足寄場跡
水門の口より吐きぬ花筏
花の昼今も現役ポンプ井戸
日光の始発の駅や花堤
汐入や芭蕉の像と春惜しみ
◇原 盛人
ウクライナプーチンもたらす春の闇
夜桜にウクライナの国民の顔沈みをり
慟哭や春の来ぬまま少女死す
ヒマワリの鉄砲玉をロシアへ撃て
春なのに惜しむものなしウクライナ
◇柳 篤樹
春惜しむ窓の少なき無言館
絵一枚残して逝きぬ若桜
花冷の京に薨る妹かな
棺蓋ふ釘の響きや弥生尽
啓蟄や藤井聡太の五冠なる
◇松田 純栄
師の墓に参りて佐久の春惜しむ
春雪の八ヶ岳(やつ)よ浅間山(あさま)よ師はいずこ
花冷の窓やウクライナ大使館
花曇り「戦争と平和」読み返し
<新海神社>
斑雪の磴上りて出逢ふ志解樹句碑
◇渋谷 麻紗
首長き海棠雨にうなだるる
戦争は嘘でありたし四月馬鹿
一人居の春の憂いの机辺かな
春惜しむ甘樫丘登り来て
春の夢打ち破りたる地震かな
◇遠藤 恵美子
今朝の空たけのこ飯をおにぎりに
花の雨カフエに開く原田マハ
山門は竜宮造り花の散る
久に逢う男女七人花の宴
山幾重淡き色なり春惜しむ
◇飯塚 佐恵子
春惜しむ信濃の山の夕茜
ブランコの少女着地の決まりたる
背伸びして爪を研ぐ猫春の風
雀らの落合ふ一樹芽吹きけり
隙あらば頭突きする山羊山笑ふ
2021年8月 作品
一木 盛人 一幹 麻紗 篤樹 純栄
孝男 恵美子
○一幹選 ◎一幹特選
暦日下町句会
◇一木 一木
天の川七里の渡し宮くわな
夏休みマスクする子に帽子なく
○駅までは後一分の大夕立
愛犬の足も止まるや蝉の声
五輪終え秋風だけがはじまるし
◇萩庭 一幹
青しぐれ潮時を待つ鷺の影
夕蝉や乙女の祈り長かりき
結界に沸き上りけり蝉しぐれ
風遊ぶ橋の袂の猫じゃらし
風水に適ふ都や夏の鳶
◇原 盛人
ゴキブリの陽動戦に引っ掛かる
空蝉のトウモロコシの葉の裏に
救急車又来たり行くコロナ夏
スマートホンに無視するつもり汗が引く
線状降水紋白蝶は頼り無し
◇渋谷 麻紗
◎鎌倉の風のままなる紅芙蓉
糠漬けの香りも旨し今朝の秋
五輪放送短夜さらに短くす
○涼しさや路地に聞きたる下駄の音
掛け花は宗旦木槿あさの茶事
◇柳 篤樹
○炎昼や音なく深く沈むもの
腐れ草蛍となる夜のサラバンド
戸袋の鵯の雛鳴く夏の暁
水打ちて塩も盛りたる心意気
草引くに差別ありけり咲く咲かぬ
◇松田 純栄
○長崎忌白き朝顔ひとつ咲き
逢引てふ言葉論じつ鰻食ふ
青罌粟に触れし日のあり風の中
凌霄や鎌倉の谷戸ほの暗き
コロナ禍のオリンピック去り野分来る
◇道山 孝男
反省をなほ問ひ質す西日かな
物影が黒々と映ゆ炎天下
月見草小さき夢を育みて
故郷の山馳せ回る野分かな
ふたりゐて同床異夢の夜長かな
◇遠藤 恵美子
○虫籠に入れては放す男の子
遠花火くりやの闇を灯しけり
夏夕べカレーの匂ふ台所
午後の陽を背に父母の墓洗ふ
あはあは半円描く朝の虹
2021.5月
(工事中)
2021-4月
一木
里山の総立ちにする芽吹きかな
(里山の芽吹き総立ちなりし
かな)
隣家はいそがしい春猫八匹
(忙しき隣家の春や猫八匹)
還暦の今女どき柿若葉
(還暦は女盛りや柿若葉)
気がかりな話題が多く啄木忌
(気がかりな話題もありて啄木忌)
リゾットの小海老たまねぎ春隣
(リゾットの具沢山なる春隣)
篤樹
尊徳像建つ道の駅花は葉に
(葉桜や尊徳像建つ道の駅)
女子校の前栽花壇フリージャ
(女子高の校庭花壇フリージヤ)
ぶしつけに偽八ヶ岳等と久弥の忌
(青々と偽八ヶ岳久弥の忌)
好日や桜蘂ふる降る句帳の上
(好日や句帳にも降る桜蘂)
濡れ縁に出す四季咲きや春の朝
孝男
風光る夢に夢見る十八歳
またひとつ反省ありぬ夕桜
桃の花お洒落に芽生え十六歳
伝へ聞くことを伝へて花曇り
この街の地形を見据え初燕
一幹
玲瓏と月夜の桜なだれけり
木場堀の潮に烟れる花の雨
海猫の声に始まる朝桜
春夕焼け北斎住みし橋の町
鬩ぎ合ふ潮の満ち退に花筏
盛人
咳やまずコロナかと思う遅春かな
料峭や恋は盲目道祖神
破壊とは嘘の上塗り陽へる
マスクなか貌見えるかな令和の世
(春寒やマスク越なる令和の世)
洗脳とは恐ろしきもの春疾風
里山の総立ちにする芽吹きかな
隣家はいそがしい春猫八匹
還暦の今女どき柿若葉
気がかりな話題が多く啄木忌
リゾットの小海老たまねぎ春隣
篤樹
尊徳像建つ道の駅花は葉に
女子校の前栽花壇フリージャ
ぶしつけに偽八ヶ岳等と久弥の忌
好日や桜蘂ふる降る句帳の上
濡れ縁に出す四季咲きや春の朝
孝男
風光る夢に夢見る十八歳
またひとつ反省ありぬ夕桜
桃の花お洒落に芽生え十六歳
伝へ聞くことを伝へて花曇り
この街の地形を見据え初燕
一幹
玲瓏と月夜の桜なだれけり
木場堀の潮に烟れる花の雨
海猫の声に始まる朝桜
春夕焼け北斎住みし橋の町
鬩ぎ合ふ潮の満ち退に花筏
盛人
咳やまずコロナかと思う遅春かな
料峭や恋は盲目道祖神
破壊とは嘘の上塗り陽へる
マスクなか貌見えるかな令和の世
洗脳とは恐ろしきもの春疾風
純栄
若布採る男がひとり由比ガ浜
松の芯つんつん稲村ケ崎かな
鎌倉の古道外れて紫雲英摘む
日蓮の安国論寺濃山吹
八重桜鬱と短き旅終わる
麻紗
四阿に聞く清明の鳥の声
白れんや参道せまき當麻寺
春灯や頬のゆたかな伎芸天
二日酔臓腑にしみる浅利汁
花の雨上りし家やリス来る
2021-3 今月の一句
どことなく人待ち顔の初桜 純栄
薬師寺の二つの塔も霞みたる 麻紗
目瞑りて光の春に真向かへり 一幹
寒桜廿里(とどり)の郷の古戦場 盛人
惜春の婆娑羅を気取る旅衣 篤樹
春日向笑いの渦の中に母 一木
機嫌よき素顔を見せる雪解山 孝男
2021-2 今月の一句
蠟梅のとろけそうなる日和かな 麻紗
◇ダイレクトに言い切った。蝋細工の花の生態を言い得た。
風花や別れといふは突然に 純栄
◇実際の別れの風景。送る側、送られる側にとって最高の供華となった。
釣果なく春宵の影伸ばしけり 一幹
◇釣れても釣れなくとも、それなりに一日を過ごすことが出来た。
良寛忌石積むだけの野の仏 一木
◇良寛忌が効いている。仏はこころの中の信心。
老人の焼芋一本ひるげかな 盛人
◇老いるとは食の執着から離れ、それなりに無ければ無いで足りる。
マンネリを打ち破りたし春一番 篤樹
◇春一番は一年に一度のインパクト。何か契機きっかけとなれば。
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通信 下町句会(2021.1)
原 盛人
大目玉こちらに向ける歳の丑
年玉の簡易書留となりしかな
福寿草咲き方忘れてしまいしか
過去現在未来忘却夢始
門松の一、二本となるめじろ台
一木一木
北へ向く列車短し日脚伸ぶ
木曽三川葦原広く鳥渡る
インド語の阿の字知りたるお正月
チンドン屋居すわっている寒気団
下萌の石も動かす力知る
松田純栄
初明り外階段に鳩が来て
眦に厨の窓や初明り
沖にタンカー波おだやかな寒の入
悲しみはるか冬麗の壇ノ浦
石の牛濡らしてゆくや春霙
渋谷麻紗
山眠るまさおな空をうち破り
悴みて釣銭おとす古着市
富士山を仕事始めの車窓より
忘れ物駅に取り行く二日はや
卸す雪窓の高さの古郷かな
柳厚樹
ワゴン車の花屋開店小春かな
雨戸より朝日ひとすじ御慶かな
つどいても付かず離れず寒雀
電線にふくら雀の真一列
姫沙羅のさ枝のしなり虎落笛
萩庭一幹
末等といふも福引いただきぬ
初写真芭蕉の句碑に侍りけり
烈風に棘を研きぬ冬薔薇
寒鯉の喧騒の世を隔てけり
ルノワールの画彩やはらか暖炉燃ゆ
2020年12月
◇畳屋の来てゐる寺や冬支度 麻紗
畳替は『年用意』の傍題であり季語として扱われている。
掲句は、巧みに季の重ねを避けながら寺の冬支度を読み込んでいる。
季重ねは必ずしも悪くはないが出来ればルールを保ちたい。今後も
季重ねを避ける術を発揮しなければならぬ俳句の宿命に出逢うだろう。
◇縁切の寺やつつじの返り花 麻紗
◇枯野とは俳句拾ひに行くところ 純栄
◇宿木も我も夕日に染まりたる 純栄
◇はぐれ鴨独りの水輪膨らます 一幹
◇牛蒡や一直線に生きてきし 盛人
◇五分刈に揃ふ山稜冬木立 篤樹
◇過疎村の照らす明るき柿の秋 一木
2020年11月
無言館きらめく落葉は散華とも 純栄
◇学徒動員で戦場に駆り出された若者たちの描いた絵画が展示されている。
若き才能が惜しまれてならない。美しく散る落ち葉と命とを重ねて
せめてもの救いとしたい。
初冬の旅や山頭火の空さがし 純栄
コロナ禍に賜はる美しき後の月 麻紗
◇後の月は十三夜月のこと。煌々と照る月光が地上の惨禍を清め癒して
くれている。コロナ禍は句にする難しさがあるが、この句はかえってコロナ禍
が十三夜月を引き立たせた。
山茶花の小径を辿り夫の墓 麻紗
ほのぼのと日を背に受けて松手入 篤樹
花八手街は日暮れの豆腐売 篤樹
石蕗咲くや佐倉城址に古き井戸 篤樹
短日や通行止めの山の道 一木
手の甲にメモするナース冬にいる 一木
霜の夜やアルプスに立ち日忘れず 盛人
◇かつての句友を亡くした気持ちがひしひしと伝わって来る。
山の友達でもあったのだろうか。
三島忌の闇を押し除け潮満つる 一幹
2020年10月
◇一部句会
一筋の仙石道は枯れ急ぐ 一木
好日や干した寝間着に飛蝗の仔 篤樹
いつの間に秋風に身を揺らす日々 盛人
寸評
・仙石原は芒の群落、先駆けて芒はもう枯色。
・微笑ましい、ほんの小さな出来事、何か良いことを予感。
・秋風に揺れたのは、むしろ心の情。
◇二部句会
鵙の声尖るや谷戸のゆうまぐれ 麻紗
さざ波の芒夕日の多摩河原 麻紗
半生を自我を通してさわやかに 純栄
揺れているなりコスモスも我が夢も 純栄
松陰忌雨に桔梗のいろ烟る 一幹
秋寂ぶや石に問ひたる禅ごころ 一幹
2020年9月
●蜩や山へ入日の関所跡 麻紗
鑑賞者に蜩の声が聞こえてくるようなロケーションのよさに恵まれた一句。山の入日は早く同時に蜩の声が響き渡る、それも現代と過去の境を偲ばれる関所跡という。
●道造の詩碑へ色無き風が過ぐ 純栄
立原道造は若干、24歳にして世を去った薄命の詩人である。府立三中、東大と同じ母校の芥川龍之介を私淑していた。龍之介は自ら命を絶ったが道造は病魔に倒れた。青春詩人の才を惜しむこととは別に秋の風が吹くばかりである。
◇一木一木
月見草湖に浮かぶや逆さ富士
軒下の見知らぬ二人夕立か
ゆっくりと白寿へ歩む竹の春
秋明菊京の守護神貴船かな
田の川の三連水車は望の月
◇萩庭 一幹
櫱の盛ん駒止め銀杏かな
実柘榴の破顔一笑潮照り
次々と鳥鳴き過る百日紅
流星や人の行く末何処なる
初潮や力くらべの石祀り
◇原 盛人
冷奴一献毎に端崩し
白靴やコロナ禍の中颯爽と
拝みゐる道真ん中に子蟷螂
枝豆の真白き塩の旨さかな
目覚めたる昼寝の朝と思いしか
◇渋谷 麻紗
秋ともし山門近き和菓子店
水音の響く高尾の秋彼岸
未だ盛ん今年の秋の百日紅
料亭の飼ひし鈴虫よく鳴けり
蜩や山へ入日の関所跡
◇柳 篤樹
学童のコロナ休校藪枯らし
もういいよの三本締めや法師蟬
蓑虫の一人遊びや人恋し
アスファルトに彼岸の境秋夕立
明治草の穂に逆光の大西日
◇松田 純栄
琵琶島に琵琶の音無し蟬時雨
道造の詩碑へ色無き風が過ぐ
青春の憂ひを今も秋灯(立原道造展)
北条氏滅びて遥か法師蟬
パイナップル切ってコロナを忘れたり
2020-8 月
◆林道を縫ひゆく夏の蝶一片 純栄
林道に差す一条の光に夏の蝶が現れた。蝶の飛翔は
頼りなげに見えるけれど、確かな目標を以っているように思える。
意志を持った「一片」という即物的現実感に惹かれる。
◆月涼し運河の街の中天に 麻紗
江戸の下町の街並は水路によって縦横に区画され、物流の手段となっていた。
今でも、その名残は十分に感じられ、取分け木場あたりの風景に
合致する。運河堀に月影が映っていることもあり涼しさと風情を覚える。
⚫︎梅雨晴や螺貝の音富士までも 盛人
⚫︎一夜酒病薄れて濁りみる 一木
⚫︎梅雨明けの兆し明るき今日の雨 篤樹
⚫︎軒接す佃の街や梅雨の明け 一幹
2020-7月
◆戸を開けて山百合の香を一身に 盛人
裏山は山百合が群れ咲いて、戸を開け放つと同時に
身に纏わりつくような香りにつつまれる。鑑賞者まで
匂って来るような感覚である。
◆切通し上りて朱夏の鎌倉へ 純栄
当に鎌倉、鎌倉の町は湘南の海の照りを浴びて、夏はそれなりに
暑い。全ての切通は鎌倉に通ずる。朱は古都鎌倉を象徴する夏のいろである。
◇一木一木
空蝉の合掌屋根に雲上る
一匹の金魚と過ごす大都会
雑草の向くそれぞれの夏旺
茄子焼いて李白も杜甫もいらぬ夜
青鷺の留守番なるや川しずか
◇萩庭 一幹
休日の雨音に覚め桜桃忌
解脱門泰山木の花錆びぬ
七夕や樹々の風騒鳴り止まず
青梅雨へ明け放ちたる囲炉裏の間
一万歩歩きに出でて梅雨夕焼け
◇原 盛人
大洪水やコロナとともに天地変
外つ国の言葉とびかひ山笑ふ
戸を開けて山百合の香一身に
半寿なる若くなるやう朧夜は
渓流に揺らめきをりぬ松
◇渋谷 麻紗
庭園の木下闇より水の音
プランターに育つ胡瓜や保育園
短夜の温泉宿のクラス会
梅雨明くる鎮守の森に鳥の声
再開の講座に備ふ半夏生(コロナ禍)
◇柳 篤樹
絵心の萎えたる吾に四葩咲く
未読既読再読そして曝書
野良猫の庭を過りぬ梅雨晴間
山涼し北へ流るる尾瀬の川(只見川源流)
明日より今日今日より明日雲の峰
◇松田 純栄
琵琶島に枇杷の音無し蝉を聴く(金沢八景)
頼朝の腰掛石とや白日傘
切通し上りて朱夏の鎌倉へ
鎌倉や蓮の花咲くおんめさま
波乗りの君らもソーシャルディスタンス
2020年6月 作品
暦日下町句会
桑の実や一潟千里の伊那山河 盛人
一瀉千里は水が一気に流れ下るさまを云う。
信州の伊那谷は山々に囲まれた、かつては養蚕の盛んな地方で
あり桑の実がいたるところ自生していることだろう。
急峻な谷を水が駆け落ちてゆく様は山国ならではの壮観な景である。
一幹 記
◇一木 一木
退屈なライオンの檻梅雨に入る
アンパンの葡萄の臍や夏の海
修行僧片へり下駄や夏来る
半夏生谷戸をとおれば逗子の海
青松葉我も発句の思ひあり(青葉松は芭蕉)
◇萩庭 一幹
咲き上れ憂き世を晴らせ立葵
行きずりの宮の茅の輪をくぐりけり
墳山の青水無月へ横たわり
万葉のせせらぎ暗き半夏生
黒南風や潮の押し寄す芭蕉河岸
◇原 盛人
桑の実や一潟千里の伊那山河
うつむきし梅鉢草に小さき蜂
薄暗き森に燦然無葉蘭
采配蘭やいつもの世にも人戦ふか
カラフルな世に戻りなむコロナ明け
◇渋谷 麻紗
雨風のあらぶ都心の梅雨入りかな
夫眠る駆込み寺も梅雨に入る
曇り日の路地を明るく金糸梅
楊梅へ鳥の出入りのしきりなる
手水舎の水吐く龍や四葩咲く
◇柳 篤樹
卯波寄す仁右衛門島の太公望
メールより電話をお呉れカーネーション(母の日)
蓬餅母の手指の太かりき
生真面目に生きて老境黄楊の花
何となく振ってみたのよ小判草
鳩待峠の橅の太幹山開き (尾瀬)
◇松田 純栄
ホテル閉づ西洋紫陽花咲き出して(鴎外ホテル)
鴎外の曽孫も見えし春時雨
舞姫の間には先客春の宵
行ぎょう子不忍池暮れ残り
野鼠は駆けをり鳥は雲に入る
◇七月は工夫をして対面の句会を
行います。
集合場所・日時;JR両国駅 七月十八日
二時PM 句会場は適宜
2020年5月 作品
暦日下町句会
一木
江ノ電の遮断機閉まり薄暑かな
雪解けに北斗に畑夢をみて
連休はシチューやカレー目借時
藤棚に集ふ何時もの車椅子
児童館大きな扉に夏の蝶
一幹
一木に山の趣き若楓
菖蒲田の畦径緩む河童郷
夏霧の底に沈める河童沼
初音聞く庭の手入を休めては
君子蘭路地に育む佃島
盛人
頬なぜる風やはらき柿若葉
フリージヤ咲きて電話の声はずむ
鵯つまむ満天星の白き花
令和二年スマホ二枚の桜かな
コロナ満つ日本国の春の闇
麻紗
薫風を入れたる亡夫の書斎かな
水槽の目高をのぞく下校の子
菖蒲葺く十戸あまりの我が故郷
飛び石を上手にとぶよ雀の子
海蝕の石置く園の走り梅雨
純栄
小流れを跳びたんぽぽの絮飛ばす
朝日燦斑雪をさらす浅間山
樅の木へ小雀山雀遊びに来
<角田光代訳>
黄金週間角田源氏を積み上げて
コロナ禍におびえて薔薇の風呂に入る
2020年4月
一木 盛人 一幹 麻紗 篤樹 純栄
暦日下町句会 一人5句投句
順不同のランダム配列。6句選内1句特選
城跡の土塁に群るる諸葛菜
軍師、諸葛孔明は戦の途に花大根の種を撒きながら遠征した。季節は移り花大根を馬に喰わせ養いながら帰還したのである。山城に自生する諸葛菜は戦国の世を彷彿とさせる。軍馬の嘶きが聞こえて来るようでもある。
1. 鯥五郎飛べよコロナは去り給へ
2. また消ゆる老舗の灯り花曇り
3. ウイルスや地軸揺るがせ春の行く
4. コロナウイルス我が春愁を吹き飛ばす
5. チューリップ休みのつづく小学校
6. 一陣の風に連なり春落葉
7. 雨降りの鳥鳴き木々の芽吹きか
8. 音読をする新型コロナウイルスの春
9. 芽柳の佐原水郷サッパ舟
10. 柿若葉リアスの丘に汽笛聞く
11. 亀およぐ春日溢るる心字池
12. 繋がれて久しき船や鳥雲に
13. 五月来ぬ古典積み上げ籠りけり
14. 合流を果たしての緩花筏
15. 山中の黄のあざやかに福寿草
16. 四阿や五倍子の花は揺れ通し
17. 春は名のみやじっと窓の外を見る
18. 春光や久彌の愛でし茅ヶ岳
19. 春浅しよろこぶ気色ボタン雪
20. 春眠の隣の肩を借りて詫び
21. 春雷や胎児でありし頃こと
22. 春闌けてマスク作りに挑戦す
23. 城山の城址深々山桜
24. 城跡の土塁に群るる諸葛菜
25. 戦場の原をうめたるさくら草
26. 武士の墓新駅よびて春話題
27. 万葉の里に聞きたる初音かな
28. 木場堀を染め尽したる花筏
29. 羅紗のガウンはおりて花の闇に入る
30. 囀りを返してをりぬ籠の鳥
良し悪しは別として、このような作り方、考え方もあるかと、参考にしていただければとおもいます。
鯥五郎飛べよ疫病去り給へ
花曇り老舗の灯りまた消ゆる
病める世の地軸揺るがせ春行けり
流行り病我が春愁を吹き飛ばす
春花壇休みのつづく小学校
雨上がり鳥鳴き木々の芽吹きかな
春寒し声に出し読む世の病めり
芽柳や佐原の郷のサッパ舟
汽笛聞くリアスの丘や柿若葉
亀甲に春日溢るる心字池
古典積み上げ巣籠りの五月かな
山中の窪に日の差し福寿草
窓外の光の春へ眼を移す
浅春や久彌の愛でし茅ヶ岳
町目覚めよろこぶ気色ボタン雪
目借時隣の肩を借りてをり
春雷や子を身籠りし頃のこと
春闌けてマスク作りに挑みけり
城山の土塁深々山桜.
古戦場埋め尽したるさくら草
武士の墓新駅となり春の風
花の闇羅紗のコートを羽織りゆく
2020.3
◇店を閉づ鉢に溢るる桜草 純栄
昨今の経済状況の中、やむを得ず店仕舞いする事例が増えている。
景気とは関係なく咲き乱れる桜草に、かえって悲哀、さみしさを感じる。
今まで経験しなかった事が次々起こり、人類の試練のときである。
心根を前向きに保ち、来るべき時を待ち、しっかり体調を管理しよう。
因みに、『桜草の花言葉』は希望、青春など前向
きな言葉に溢れる。
◇鎌倉の昼食会へ春ショール 麻紗
鎌倉の文化的雰囲気の地へ、春ショールを纏い
華やぐ気分で出かけた。春ショールは湘南の風を受けて
軽やかに舞うような心地だったろう。明るい鬱を払拭
してくれるような一句となった。
菜の花のとほくに見ゆる無人駅 一木
誕生日西行桜に出逢ひけり 麻紗
竹間引く音の響くや彼岸入 一幹
2020.2
◇甲斐駒の肩に明星寒明くる 篤樹
四方の山々に囲まれ甲斐盆地は星空の美しい土地柄である。
甲斐駒の存在感は、ひときわであり広く
尊崇されている。
武田武士にとって馬は命と同じに大切な同胞であった。
その馬の背肩に真っ先に寒明の明星が輝いた。
山好きの作者にして壮大にして格調を備えた一句となった。
庭の梅一枝手折り供花とせむ 純栄
蹲に知足の文字や寒椿 麻紗
雪嶺や豊かに眠る伊那の谷 盛人
日脚伸び旅の終わりカフェテラス 一木
故郷の葬送冬の畔田径 一幹
2020.1
◇ 風花の寸光に姉導かれ 盛人
かすかなる風花の微光に、故人への彼の世への
光明を見出したのである。かすかなる気配こそ
安らかで平安の世に導かれるにふさわしい。
『納棺や姉カトレアに頬委染めて』の句と併せて
作者の姉に対する思慕が伝わってくる。
姉は作者にとって母のような存在だったという。
晩年こそ冒険せよと御慶かな 純栄
ステーキを焼いて一人の小正月 麻紗
しぐるるや番傘で行く前角力 篤樹
おばんざいこんにゃく辛き小正月 一木
階に山茶花の散る雨一と日 一幹
2019.12
◇ 大皿に風花舞ひぬ陶器市 篤樹
風花は はるばる峠を越えてやって来た。
大皿の絵付けは伊万里、有田?
その絵柄の中へ風花が舞い込み溶け入る。
絵柄が生き生きと浮かび上がる。
『小屋掛に冬日差 し込む陶器市』と併せて
冬の陶器市を余すところなく表現している。に
雪が降る亡き友よりの便りとも 純栄
木の葉舞ふビルの谷間のカフェテラス 麻紗
皇后の涙を拭ふ菊日和 盛人
打ち立ての近江のそばや里神楽 一木
冥れば既に老境日向ぼこ 一幹
2019.11
◇鵯騒ぐ日なり葉書を買ひに出る 純栄
鵯のなく事と葉書を買いに行く事は一見
何ら関連がないように思えるが、鵯がせわしく
鳴くことによって、忙しさを急き立てられ
そろそろ年末の年用意もせねばと少々の
焦りも感じられる。微妙な心理的描写。
坂東の札所詣でや柿日和 麻紗
朝のコーヒ小春の窓を開け放ち 純栄
流鏑馬の的射る音や楮の実 盛人
里山の名も無き花に秋の蝶 一木
江ノ電の無人踏切石蕗の花 篤樹
破荷へ忽ち風の錆びゆけり 一幹
2019.10
◇ 雨戸繰る朝の香りや金木犀 篤樹
金木犀には惱の深部を覚醒させるような
香りがある。知らない地を訪ねた折りに、
何処からともなく漂う香りにほっとした
安らぎを感じ季節の実感を確かなものにする。
雨戸を繰り金木犀の香りとの出会いは、
日常の事ながら新しい季節への旅でもある。
そぞろ寒忘るる事の増えてきて 麻紗
濁流の岸辺走るや白鶺鴒 盛人
権現堂堤を染めし曼珠沙華 一木
白萩や白寿の叔母の訃報くる 純栄
含みたりちから漲る新走 一幹
2019.9
◇ 鰯雲海へ流るる夕べかな 麻紗
壮大にしてシンプル、且つ、詩情豊かな一句。
削ぎ落してこそ高まる詩心がある。
麻紗さんは新たな境地を得た。
今後の作品を楽しみに待ちたい。
月今宵大和の宿に独り居て 麻紗
日に数度山雨きたりて深む秋 純栄
天高し百五十六段の磴なかば 盛人
飛び石に残像ありぬ青蜥蜴 篤樹
芋煮会追加食材山にして 一木
地芝居や公民館は刈田中 一幹
2019.8月
◇ 追悼式や至純の菊のあふれたる 盛人
前詞に『全国戦没者追悼式』とある。
日本人にとって8月は特別な月である。
毎年ながら、純白の菊が眩しい。
国を守ろうとした純真さは菊の白さに重なる。
作者は敬愛する兄を南方戦で亡くされた。現在の平和と
安定は、多くの犠牲の上にもたらされたものである。
星生まる台風一過の副都心 麻紗
大木は一国一城蟬しぐれ 一木
水打ちて一日の区切り夕明り 篤樹
無造作に甕に投げ入れ吾亦紅 純栄
湾岸に起重機並ぶ晩夏光 一幹
2019.7月
◇ 古書街は篠つく雨の餓鬼忌かな 麻紗
餓鬼忌は芥川龍之介の忌日である。暑い盛りの
古書街を歩いていて文人の忌日に思いを馳せた。
折からの激しい雨は龍之介の最晩年の波乱に重なる。
久保田万太郎とは府立三中(現、両国高校)の
同窓である。万太郎の『芥川龍之介仏大暑かな』
の一句に思い当たる。
戦場ヶ原いつせいに翔つ夏の蝶 純榮
雨粒の音して百合の匂ひくる 盛人
堰越ゆる水音高し半夏生 篤樹
ニュートリノ実験場や夏の山 一木
山梔子の花錆び雨のニコライ堂 一幹
2019.6月
新茶汲むいつの間にやら晩節に 純榮
白々と山の端明くる山法師 一幹
木道の雨に打たるる落し文 篤樹
先見ゆる都電の駅や立葵 一木
はまなすや海の彼方の人生きよ 盛人
2019.5月
四阿に水音を聞く薄暑かな 麻紗
姫女苑はなやかなりし心字池 盛人
夏来る新大関の幟立つ 一木
夕闇に白き山吹今盛ん 純栄
水彩の筆を走らす若葉光 一幹
2019.3
春光や乙女の像は向き合うて 麻紗
花辛夷にごりなき空ありにけり 純栄
サンシュウの花の光や手形石 盛人
椿咲く胸突き坂の芭蕉庵 一木
点滴のしづく消えゆく目借時 篤樹
風ひと日日がな鈴振る花馬酔木 一幹
梅を挿す机の上の終刊号 宏光
2019.2 句会の一句
淡雪のあとの入日や副都心 麻紗
靖国の海軍カレーや初詣 盛人
春立てりもみあふ鯉の歓喜かな 一木
深川は第二の故郷春の雪 純栄
上戸にも下戸にも非ず花菜和 一幹
2018-12
◇宏光作
青空へこぞり辛夷の冬芽たち
星あまた花と咲かせん大枯木
◇宏光 特選
倒したる欅の丸太冬ざるる 篤樹
遠筑波大根祀る待乳山 一幹
近江路の我も旅人散る木の葉 一木
引越といふ終活や年詰まる 純榮
小春日や雀水飲むなつめ鉢 純榮
宏光選
本殿へ銀杏落葉を踏みしめて 麻紗
初島の水尾ゆるやかにかろやこに 純榮
ダイヤモンド富士光芒の枯尾花 盛人
一筋の水尾のひかりや鳰 一幹
かはかはと鴉師走の声こぼす 純榮
定例会 2018-11
宏光特選
○鴨川の日を梳き流る小六月 一幹
○厚物の菊の乱れに艶ありぬ 一幹
○千木の指す鈍色の空神の留守 篤樹
宏光選
芝居はね星の出てゐる近松忌 麻紗
霜月の雲の重みを知る日々や 一木
庭師来て竹伐る音を響かする 純栄
好日や何処かで蒲団叩く音 篤樹
深閑として神宮の初紅葉 純栄
明治座へ銀杏黄葉の径を行く 麻紗
団栗の土の湿りの重さ乗せ 経世
鴨来る潮入池を忘れずに 宏光
定例句会 2018-9
◇宏光作
秋草の雨にひかれる江戸川原
鉄道草スカイツリー遥かにし
子ら来ねば老に揺れゐるねこじゃらし
◇宏光 特選
みちのくの友と酒酌む良夜かな
麻紗まほろばのみ仏眠る星月夜
麻紗秋風や手紙の返事まだ書けず
純榮薬飲むことも日課や敬老日
純榮九月来ぬ病床六尺読み返し 純榮
◇宏光 普通選 互選
秋しぐれ櫓太鼓の音けぶり 一幹
流るるは己が体か鰯雲 篤樹
虫の音やひとまず閉じる哲学書 経世
鈴虫のリズムを聞くや床に入る 一木
無花果のジャムうまく煮上る日曜日 麻紗
虫の闇深き一隅木遣塚 一幹
露けさや不知火型の横綱像 一幹
好天に暮るる家郷の厄日かな 麻紗
鰯雲灯り始めし屋形船 綾女
AIとロボットの脳西瓜切る 一木
秋めくやすり寄る猫の息づかい 経世
風鈴の仕舞ひし後の空音かな 篤樹
重陽の川を跳びゆくコースター 綾女
曼珠沙華思い定めず手を合はせ 一木
新涼や白き項のほつれ髪 経世
最果ての殉教の島鳥渡る 篤樹
殉教の城の空堀草の花 篤樹
はらからもいとこも元気秋彼岸 純榮
大川の船日和なり秋彼岸 一幹
2018.8月
◇宏光作
露草の眸を見つめ見つめられ
きのふより今日のつくつく法師かな
◇宏光特選
駅前の広場を堰きて盆踊 綾女
百日紅水のひかりに疲れあり 一幹
◇互選句
湯上りの火照りに呷る缶ビール 綾女
婿が着る夫の形見のアロハシャツ 麻紗
山にあれば山に合掌終戦日 純榮
廃線の先は廃村雲の峰 経世
ひぐらしの渓へ出湯を掛け流す 一幹
黄ばみ初む風船葛佃小路 麻紗
秋興は天文台に集合す 一木
俳諧は右脳左脳には夜の秋 経世
窓開けて風と添ひ寝や夜の秋 綾女
真っ白な飯を炊き上げ終戦日 純榮
風鈴の音色を添ふる骨董市 一幹
鍬形虫の飛び去る夕べ山雨過ぐ 純榮
D51のゆるりと動く蟇 経世
木瓜の実の取つて付けたるごときなる 篤樹
ふる里や水音をきく夕端居 麻紗
人生の放課後長し穴惑
みんみんの長き語尾引き終戦日 一幹
艶めきし思ひ出話生身魂 篤樹
山を這ふ雲より涼気届きけり 一幹
小流に音なかりけり送り盆 純榮
無駄口の愚痴へと移る冷し酒 経世
独り居の気儘な暮らしとろろ汁 綾女
風荒き都心8月十五日
定例句会 2018-7
◇宏光作
抽んでて花に風来る藪茗荷
夏雲やからくり時計の童歌
蝉鳴くやカーテン漏るる朝の日に
◇宏光 特選
太極拳滴る山に麻向うて 麻紗
じゃがいもの花や遠くの雲を呼ぶ 純榮
風死せり迷ひ入りたる袋小路 綾女
◇宏光 普通選 互選
四万六千日詣で叶はず川見つめ 純榮
夏草や栗毛のひかる競走馬 一木
隠れ家のやうな民宿蛍とぶ 純榮
街猫の野良を徹すや旱星 一幹
退院やみんみんの声嬉しくて 純榮
当日互選句
甚平や乳母車押す異邦人 麻紗
駅へ出る街路樹の枇杷実りをり 綾女
夕照の河へ届くや蝉の声 一幹
水出しの珈琲ブラック夏の朝 篤樹
夏草や栗毛のひかる競走馬 一歩
花殻を摘む山梔子の香の名残 篤樹
意地張りしあとの淋しさ麦の秋 綾女
川風の船の先導夏燕 一木
願ひより思い出勝る雲の峰 一幹
歌麿の細く引く眉夏兆す 経世
夏草のふと生き返る風の息 経世
長髪の梳き手を入れる半夏生 一木
失恋は過ぎ去りしこと大夕焼 経世
暑に耐ふる樹々の鴉の鳴かずをり 一幹
快く目覚めし里の木槿かな 麻紗
定例会 2018年6月
◇宏光作
梅雨晴や腰膝ともに機嫌良し
道あれば夕焼雲を道連れに
蒲の穂の寡黙な貌の並びたる
◇宏光 特選
橋多き町の卯の花腐しかな 麻紗
紫陽花の丘のぼり来て相模湾 一木
覚えなき花庭に咲く芒種かな 一幹
◇宏光 普通選
枇杷の実の落つるにまかせ潮照り 一幹
プリンセスミチコてふ薔薇たそがるる 純榮[m1]
マーガレット朝より晴るる佃島 麻紗
麦秋や葬儀終れば散ぢりに 純榮
人知れず鎮守の杜の夏落葉 篤樹
◇当日の互選句
髪染める日と決めてをり梅雨晴間 綾女
墓石に団栗落ちて跳ねにけり 一木
いま少し生きるつもりの鰻喰ふ 綾女
歩の遅々と紫陽花の順路かな 一幹
夏めくや言葉の角のやや解れ 経世
花菖蒲帰郷の川のささ濁り 一幹
断層や論点一つずれる夏 経世
定例句会 2018 五月号
宏光特選
上越線窓の高さに桐の花 篤樹
舞殿の庇の深し五月雨 篤樹
フランスの絵本ひもとく聖五月 純栄
互選句
夏場所の櫓太鼓や高曇り 一幹
阻道の空.の高きにほうの花 篤樹
学生のインタービュウー受く五月かな 純栄
通り過ぐとき梅の実をちらと見る 宏光
筆塚の裾をめぐりて紅躑躅 綾女
駅への近道昼顔.に見送られ 宏光
大川の風をふふむや薄衣 綾女
春愁や化粧落としたる惚け顔 経世
行くあてを尋ねてみたき夏の蝶 宏光
雑多な荷広げ船宿夏迎ふ 一幹
電車待つ夏鶯の山に向き 宏光
釈迦む尼の袈裟は瀬山の緑かな 篤樹
孤老待つラジオ体操春の杜 一木
長閑さや津軽こぎんのベコの足 経世
太鼓橋登りて望む藤浄土 綾女
さよならと梅雨の車窓の曇りとる 一木
舞殿の庇の深し五月雨 篤樹
夏燕軒を貸したる店主老ゆ 宏光
たんぽぽや優しき女の軽き.嘘 経世
走り梅雨あをき闇より鷺現れる 一幹
山寺や包みし闇に.青時雨 一木
ロボットと暑いねと声交し合ひ 純栄
定例句会 2018・四月
宏光特選
名園に咲いておおらか姫女苑 純榮
万葉の里に出会ひし初燕 麻紗
庫裡の裏なんじゃもんじゃの花明 麻紗
互選句
蕎麦すする霞む秩父の山眺め 麻紗
白つつじ紫つつじ日を撥ねて 純榮
花びらの吹き寄せてゐる夫の墓 麻紗
草餅の甘味に憩ふ杉の箸 経世
花吹雪結解越えて憚らず 篤樹
川に添ひ走る漢や鳥曇 綾女
春愁や未だに迷ふ中七字 経世
揚雲雀風の隙間に声継ぎぬ 一幹
篝火の花の彼方真暗闇 篤樹
満潮の川遡りゆく花見船 綾女
十薬の畠となりたるごろた庭 篤樹
ガラス吹くレンガの館春夕焼 一木
買物提げ老いの帰るや花曇 宏光
定例句会 2018.3月
◇宏光作
頑是なきほどの赤らみ牡丹の芽
まんさくのあっけらかんと呟けり
風来れば夕日を散らす花辛夷
◇宏光 特選
老犬と歩を合はせ行く春野かな 山口美
吊し雛老人ホーム華やぎて 山口美
春の月甘え鳴きする猫とゐて 綾子
猫柳上水跡に日の残り 一木
江ノ電に彼岸の僧と乗り合はす 一幹
宏光選
花開く水音小さく隠れ滝 一木
良き夢の続きを見たき朝寝かな 篤樹
海風の幽かに流れ椿落つ 八田羽
早春のひかりを運び波無尽 一幹
芽起こしの雨に明けゆき雨に暮れ 純榮
鳶流れ風荒ぶ日や若布干す 一幹
海望むプラットホーム風光る 山口啓
ビニールの傘の捨てあり春嵐 綾女
互選句
わらび餅大和の寺を巡り来て 麻紗
一病を抱へ春待つこころかな 純榮
乳母車幌上げてゆく春日かな 篤樹
今年また仕込みし味噌や梅盛り 一木
鎌倉の小寺や小さき雛飾る 純榮
翻るたび翳りけり春の鳶 一幹
久に逢ふ友の白髪や春時雨 綾女
福寿草人には告げぬ事もあり 一木
啓蟄や旅の話で盛り上がり 純榮
保険会社よりバレンタインといふ日かな 盛人
歳時記をめくりゐる時初音聞く 山口美
大輪の椿落ちては地を飾る 八田羽
里山の真上は青く花菜風 一木
はらり散る触りし枝の春の雪 盛人
変はらぬと互いに云うて春うらら 山口
定例句会 2018.2月
◇宏光作
浅春の風にうなづく木々の枝
さざ波に北帰の鴨のよく眠る
咲き満ちて梅山門をはみ出せり
◇宏光 特選
独り居やテレビと蜜柑あれば良し 綾女
けふよりは春灯となる屋形船 純榮
宏光選
せせらぎの光の春を謳ひけり 一幹
盆梅に思ひのままと銘にあり 篤樹
寺町を行くや春たつ陽を浴びて 麻紗
踏み跡の道になりたり霜の庭 篤樹
頑な木の芽ありけり風の径 一幹
奉納の酒樽積まれ冬牡丹 綾女
鵯に喰はれてしまひ実万両 麻紗
冬牡丹上野の空に雲のなし 麻紗
互選句
実朝忌荒れ放題の相模灘 純榮
父母を超へし長生き冬苺 綾女
水鳥の重さ無きごと流さるる 篤樹
雪残る門に弾痕ありし寺 麻紗
初恋のやうに粉雪降り始む 純榮
湿りある土や無傷の落椿 麻紗
滿潮に遡りくる都鳥 綾女
中岳の噴煙はるか雪千里 篤樹
雪の朝痩せし流れの不動滝 一木
まんさくの夕空分かつ日と月と 一木
籠りゐて繭のひかりの春障子 一幹
定例句会 2018・一月
宏光 特選
鎌倉や谷戸にみつまた咲き出して 純榮
戎堂の一隅点す寒椿 純榮
宏光 普通選
西施てふ銘ある蓮の枯れにけり 麻紗
さりげなく船を躱すや都鳥 一幹
凍鶴や池の水面を見詰むのみ 綾女
水仙の一輪匂ふ手水かな 篤樹
梅一輪介護の庭にほころびて 一木
福笹を抱きて帰る鳶の笛 純榮
互選句
百合鷗たがひに杭を奪ひあひ 宏光
着脹れて着脹れびとと逢ひにけり 綾女
ドローンの凧に変わりし新開地 一木
白障子どの部屋からも池見ゆる 麻紗
ふるさとは限界集落木守柿 篤樹
さざ波にあやされをらん浮寝鳥 宏光
水に影冬木の枝垂桜かな 宏光
こんにゃくの碑や侘助の夕日呼ぶ 盛人
水鳥へ堤の返す船の水尾 一幹
初電話薩摩男の声太し 麻紗
栴檀の大樹見守る宵戎 純榮
背中丸め寝てみたき日の布団かな 篤樹
曳船の初荷や土を山盛りに 一幹
雪虫の飛び交ふ靖国神社かな 盛人
たわむれに乗りし竹馬歩の三歩 綾女
札幌の友へのメール雪見舞 麻紗
初商ひ契約印にちから込め 一幹
七福詣目黒の不動江戸鬼門 一木
吉良邸の首洗井戸枯葉浮く 綾女
◇ご案内 三十年二月
月例会二月十七日(第三土曜)
指導:前澤宏光
五句出句
会費\1000+
欠席投句は(前日までに)
封書かFAX03-6456-1030(一幹 自宅
世話役 萩庭 一幹
〒130-0014 墨田区亀沢1-4-14-701
会計・会場 原 綾女
〒130-0025 墨田区千歳 1-8-8-308
℡03-3633-7818
定例句会 2017・十二月
◇宏光作
遅れゆく一羽を待たず冬雀
名園やまづ万両に迎へられ
夕日中ビルより高く百合鷗
老いの眼を閉づれば故郷山眠る
◇宏光特選
白川の流れ乱さずず鴨来る 純榮
産土神の鈴の緒ほつれ片時雨 一幹
◇宏光普通選
上野駅十三番線に雪列車 一木
短日のヒマラヤ杉の影長し 一木
銀杏黄葉斯くも散りたる行者道 綾女
哲学カフェの苦きコーヒー年惜しむ 純榮
笑み栗を眺め拾はず山の宿 純榮
菰を巻く松それぞれに石を据え 麻紗
◇ 互選
ど忘れの度重なりぬ返り花 篤樹
山茶花や咲きつ散りつつ華やげり 盛人
石組の石の間に石蕗の花 麻紗
余分なこと言はずありたし花八手 篤樹
短日や仏ばかりの美術館 一幹
残菊の括られてなほ艶めける 純榮
眠る鴨水脈ひく鴨や苑晴るる 麻紗
演説のサーロー節子に冬日燦 盛人
欲得も恥らいもなし日向ぼこ 篤樹
雨上がり鴉鳴き出す一葉忌 綾女
恙なきことの幸せ冬至風呂 麻紗
言の葉も吹き溜まりけり歳の市 一幹
吉祥草の実を転がせり掌 盛人
雑草のその身に強き春を待つ 一木
山茶花の饒舌にして静かなり 篤樹
冬日燦ここにも元祖鯛焼屋 綾女
◇ご案内 三十年 新年句会
月例会一月二十(第三土曜)
指導:前澤宏光
五句出句
会費\1000+
欠席投句は(前日までに)
封書かFAX03-6456-1030(一幹 自宅
世話役 萩庭 一幹
〒130-0014 墨田区亀沢1-4-14-701
会計・会場 原 綾女
〒130-0025 墨田区千歳 1-8-8-308
℡03-3633-78
山暦下町 俳句定例句会 2017・十一月 吟行会
◇宏光 特選句
終のいろつくして冬の銀杏かな 文子
雪吊の松を要の心字池 文子
名石の冷ゆる豪商屋敷跡 麻紗
◇ 互選
冬鳥のしきりに鳴くや慰霊堂 麻紗
石に添ひ水に沿ひたる石蕗の花 一幹
黄葉散る激しさ震災記念堂 宏光
黄落のまつただなかの車椅子 文子
菰巻の松池の面に枝ひろげ 綾女
生駒石の陰よりのぞく石蕗の花 宏光
据ゑられし伊予青石や時雨来る 宏光
お祝いや新米ずしり届けられ 純榮
はじらひの色に開きし冬椿 文子
黄落のひかりの中に慰霊堂 麻紗
深川やひと手をつなぐ落葉道 宏光
凍空へ突き刺さりけり鳥の声 一幹
築山に膝つき松の手入れかな 麻紗
時雨るるや青石青をあざやかに 文子
一斉に池覗きをり石蕗浄土 綾女
石蕗点す江戸豪商の館跡 一幹
初時雨伊予青石の艶めきて 純榮
深川の風のひと日や冬鷗 一幹
渡り来し群まだ解かず鴨眠る 宏光
初鴨の来て賑はへり雨の池 純榮
苑果てに芭蕉の句碑や紅葉散る 綾女
◇ご案内 忘年句会
月例会十二月十六日(第三土曜)
指導:前澤宏光
五句出句
会費\1000+
欠席投句は(前日までに)
封書かFAX03-6456-1030(一幹 自宅
世話役 萩庭 一幹
〒130-0014 墨田区亀沢1-4-14-701
会計・会場 原 綾女
〒130-0025 墨田区千歳 1-8-8-308
℡03-3633-7818
定例句会 2017・十月
◇宏光作
◇宏光 特選句
◇ 互選
◇ご案内 吟行会
腰をなだめて秋霖の街へ出づ
秋の日や広場の裸像影を濃く
露寒の川や北斎棲みし町
雨容赦なしちりばめむる萩の花
嫋やかに己が重さの露の萩 一幹
小鳥らに森のふくらむ木の実どき 一幹
ふるさとの野山は夕茜父母眠る 一木
独り居の四角く切りし西瓜買ふ 綾女
赤とんぼ藤村詩碑に翅休め 純榮
うたたねの夢さめやらぬ夜長かな 篤樹
秋霖や枝の鴉のぽつねんと 麻紗
秋の大祭追想曲は海ゆかば 盛人
水鳥の紅葉の水面崩しおり 一木
木犀の匂や重し今朝の雨 篤樹
忠敬てふ御酒賜はりぬ菊日和 純榮
毬を脱ぐ栗に一雨の上がりけり 一幹
穭田の轍に昨夜の雨光る 麻紗科
柿紅葉近江はうれし人恋し 一木
通草の実見えて届かぬ蔓の先 純榮
武骨なる父でありしよかりんの実 麻紗
山茶花の元に雀の遊びをり 盛人
父母よりも長く生きをりとろろ汁 綾女
み仏のおおきな耳や冬近し 一木
捨てきれぬ淋しさのあり十三夜 一幹
捨て猫の小さき眠り暮の秋 篤樹
出てはまた雲に隠れし望の月 麻紗
秋冷や去来旧居に日の落ちて 麻紗
参列の人影長し月の通夜 篤樹
十六夜の酒を静かに酌む師かな 純榮
深川 木場公園
句会場:木場公園内休憩室
月例会十一月十八日(第三土曜)
集合:JR両国駅改札付近
指導:前澤宏光
五句出句
会費\1000
欠席投句は(前日までに)
封書かFAX03-6456-1030(一幹 自宅
世話役 萩庭 一幹
〒130-0014 墨田区亀沢1-4-14-701
会計・会場 原 綾女
〒130-0025 墨田区千歳 1-8-8-308
Tel0
定例句会 2017・9月
◇宏光作
来ては去る風にコスモス応へをり
木槿咲くむかしの農は馬を飼ひ
天地の不穏や柘榴かっと裂け
ふるさとの友も老ゆらん蓼の花
◇宏光特選
山鳩の露けき声や隠れ里 一幹
寂として百日紅のひかりかな 一幹
大道芸にはずむ小銭や草紅葉 綾女
互選句
寒村は日にバス二便盆の月 一木
コスモスの色それぞれに日照雨かな 篤樹
待ちわびし句集積み上ぐ白露かな 純榮
病院は継ぎ足し迷路秋の雨 一木
池の辺にみな傾きて曼珠沙華 綾女
香草を育てし庭の良夜かな 一幹
恩師逝く声のまぼろし思ひ草 盛人
子規の忌や露草積んで悔少し 純榮
とろろ汁箱根旧道下り来て 麻紗
雲間より日の一筋や雁来紅 一幹
海鼠塀に添いて歩くや萩の花 綾女
秋初風四十雀の五羽のこゑ 盛人
白鷺も池の景色や秋日燦 綾女
さざ波の光を恋ひて秋あかね 一幹
水音の遠ざかりゆく夕花野 純榮
山遠し迷ひ込んだる花野かな 純榮
ちちろ鳴く上野の園の鶴瓶井戸 麻紗
ふる里の木の実時雨に打たれをり 篤樹
新秋や一番星を樹間より 純榮
蝉しぐれ芭蕉生家の厨にも 純榮
芭蕉書く自然てふ文字涼やかに 純榮
秘め事の幾つあるやら柘榴割る 篤樹
定例句会 2017.8月
◇宏光作
芙蓉咲く一夜の夢の色ならむ
曇天の続くやほのと花木槿
高々と鳴き秋蝉の樟となり
◇宏光 特選句
釣忍そこには風のあるらしき 篤樹
堰越ゆる水音高し今朝の秋 篤樹
小高きに長蔵の墓沢桔梗 篤樹
凌霄のことに明るし過疎の村 麻紗
宏光選
折畳み梯子延ばして松手入 綾女
炎天に踏み出す一歩深呼吸 綾女
朝毎の般若心経秋立てり 綾女
産土神の富士塚包み蝉しぐれ 一幹
母の忌やみんみんの声遠ざかり 純榮
浜木綿や島に一つの診療所 麻紗
互選句
星屑の湯に浮かべたる万座峰 一木
霧しぐれ富士の裾野に湧水池 一木
今生も後生も聞かむ蝉声明 一幹
赤松の黒松の蝉鳴き競ひ 一幹
蝉しぐれ芭蕉生家の厨にも 純榮
芭蕉書く自然てふ文字涼やかに 純榮
秘め事の幾つあるやら柘榴割る 篤樹
◇ご案内
月例会毎月(第三土曜)
指導:前澤宏光
両国ライオンズマンション2時PM
五句出句
会費\1000
欠席投句は(前日までに)
封書かFAX03-6456-1030(一幹 自宅
世話役 萩庭 一幹
〒130-0014 墨田区亀沢1-4-14-701
会計・会場 原 綾女
〒130-0025 墨田区千歳 1-8-8-308
Tel03-3633-7818
定例句会 2017.7月 定例会
◇宏光作
衰へし腰を伸ばせと大夏木
家留守の迎へてくるる帚草
あめつちの間ひるがへる夏燕
◇宏光 特選
白南風や沖にタンカー行きへり 麻紗
切り花に蟻の一匹迷いひこいむ 篤樹
山住みの友より届く夏見舞 純栄
林立のビル夏の陽を照り返す 綾女
寡黙なる岳父でありしほうの花 篤樹
◇互選句
朝顔市団十郎の名が人気 一木
畳とは気持ち良きかな昼寝覚 純栄
白南風脚揃へゆく海の鳥 一幹
中国人も画眉鳥も来て夏高尾 盛人
小波に流さるるごと未草 篤樹
日盛りの赤信号の長かりし 麻紗
再びの間合いに戻り水馬 一幹
緑園の夏の夜空にジャズの歌 一木
揚羽蝶姉の化身か葉隠れに 純栄
かけ合いや夏の露店の輪島市 一木
山門に一礼し過ぐ竹落葉 綾女
大輪の向日葵ながめ出勤す 麻紗
かたつむり下座精進の碑に棲めり 盛人
四万六千日詣でず川をみてゐたり 純栄
濁世の表裏なる茅の輪かな 一幹
朴訥な能登の訛りや半夏雨 一木
朝涼の公園に舞ふ太極拳 麻紗
空晴れて隅田川風雲の峰 綾女
無人駅出迎へくれし立葵 純栄
万緑や享保四年の天狗膳 盛人
定例句会 2017・6月 定例会
◇宏光作
旱梅雨子亀も天を仰ぐなり
塵捨てに出て目を合わす梅雨鴉
天空の一点となり夏燕
睡蓮の一花に眠る鉢の水
◇宏光 特選
物心つかぬ頃なる祭髪 一幹
町川の梅雨夕焼を流しけり 一幹
宏光選
十薬の花を厠に旅の宿 麻紗
南瓜煮ながら赤ペン走らする 純栄
こもりくの初瀬の寺や白牡丹 純栄
蛍飛ぶ闇にかすかな水の音 麻紗
のうぜんは火の花雨に盛りけり 一幹
青簾古き家並の佃路地 麻紗
登廊行くやぼうたん咲き揃ひ 純栄
一筆箋瀬田の蛍の舞ふひかり 一木
木道の灼けて歩荷の荷の高し 篤樹
川風や祭半纏着流しに 一幹
◇互選句
今日も行く健康体操梅雨のなか 綾女
護岸壁越へて咲き継ぐ凌霄花 綾女
女人高野石楠花色に昏れゆけり 純栄
万緑や会津街道山へ入る 篤樹
新茶汲むパンダの顔のパン買ひて 綾女
一筆箋瀬田の蛍の舞ふひかり 一木
木道の灼けて歩荷の荷の高し 篤樹
筑波嶺の雲なき朝や雲雀鳴く 一木
例句会 2017・五月 定例会
佃 吟行会
◇宏光 特選定
潮風に夏の匂ひや渡し跡 純栄
岸を打つ卯波しづかや少女像 麻紗
佃小路戸毎の鉢や薔薇五月 一幹
◇互選句
夏日射す鳥居にかかる陶扁額 麻紗
船をさの家の構へや夏柳 一幹
佃にも夏来たりけり篊の波 篤樹
ポンプ井戸バケツの中の日向水 宏光
船音や河口の町の夏霞 一幹
夏来たる伊予の青石鰹塚 篤樹
扁額は陶製緑の風の中 綾女
風薫る佃は平和な島ならむ 純栄
竹皮を脱ぐや社に風わたる 麻紗
潮風に夏の匂ひや渡し跡 純栄
岸を打つ卯波しづかや少女像 麻紗
潮けむる河口を茅花流しかな 一幹
夏霞たつきの見ゆるビルの窓 宏光
犬抱いて詣でる女夏落葉 宏光
路地抜くる風は五月の佃島 篤樹
緑陰にひときは高し鰹塚 綾女
小満や臍にぶどうのアンパンを 一木
両国駅汗拭き通る力士かな 純栄
満潮の川の逆流茂るなか 綾女
夏潮に逆らひモータボートゆく 宏光
高きビル増え来し佃薄暑かな 麻紗
潮入の夏の匂ひや鰹塚 一幹
バンマツリ満開佃に夏来る 純栄
佃島低き家並やさつき空 一木
夏柳つり舟もやふ佃堀 麻紗
神輿庫は社の奥や竹の秋 綾女
定例句会 2017・4月 定例会
定例句会 2017・3月 定例会
◇宏光作
山茱萸の花の明りや震災忌
白蓮のこぞりて雲に呼びかけむ
顔に日の来て衰ふる花辛夷
◇宏光 特選
春燈や微笑なぞめく阿修羅像 麻紗
神苑の木の間隠れに孕み鹿 麻紗
山笑ふ民家の屋根を猿歩き 純栄
土牢の太き格子や冴返る 篤樹
◇互選句
東風吹くや谷戸の奥にも人の影 一木
亀鳴くや人人人は嘘をつき 盛人
花辛夷はやそれぞれの空のあり 一幹
菜の花や帽子が好きで旅が好き 一木
うららかや築地は低き東慶寺 篤樹
すり減りし石の階彼岸入り 篤樹
桜東風若武者もみな愁いあり 一木
足の爪剪るは無骨や春の縁 綾女
禅林を出でてこの世は霾ぐもり 一幹
マンゴーもサボテンの実も美味し国 盛人
男の背さみしそうなり春霙 純栄
土橋渡るたんぽぽの絮吹きながら
木曽川の向かうは美濃や朧月 麻紗
復興の風船放つ海の上 純栄
三椏の花や矢倉に日の差しぬ 一幹
春光や力士手形に掌を重ね 綾女
緋衣の僧の先導芽吹き風 一幹
ゆるやかに流れ花待つ隅田川 純栄
山暦下町 俳句会
◇宏光作
帰りたや伊那七谷の花の頃
あるがまま水面に映る残花かな
どの木とも知れぬ花びら飛んで来し
◇宏光 特選
清明の枝移りゆく鳥の声 麻紗
一枝は水面に触るる桜かな 麻紗
花びらの舞ひ込む寺の野点かな 麻紗
鴨崩しゆく不忍池の花筏 麻紗
花の雨肩濡らしたる芭蕉句碑 一幹
さきがけの木蓮一花高々と 篤樹
◇互選句
あかねなる多摩山すその花霞 盛人
花辛夷はやそれぞれの空のあり 一幹
さくら草売れずに残る売り家かな 一木
外つ国の言葉聞こゆる花わさび 篤樹
春怒涛贔屓力士の大一番 篤樹
看護士の手際の良さや初桜 一木
花万朶雲梯に身を任せをり 綾女
切株に樹齢を遺し春の雨 一幹
マンゴーもサボテンの実も美味し国 盛人
曲水の宴待ちをり椿落つ 純栄
土橋渡るたんぽぽの絮吹きながら 一幹
西ノ京そぞろに歩き春惜しむ 麻紗
復興の風船放つ海の上 純栄
三椏の花や矢倉に日の差しぬ 一幹
春光や力士手形に掌を重ね 綾女
緋衣の僧の先導芽吹き風 一幹
誰が住むや乙女椿のを生垣に 純栄
春雨やおりょう終焉の地を巡る 盛人
消えぬ間につぎは大きく石鹸玉 一幹
月も吾もひとりなりけり桜の庭 純栄
わさび田の小石や光る春の水 篤樹
花の散る子を恋しかな隅田川 盛人
中庭の紅枝垂咲く役所かな 純栄
花筏歩く速さに連なれり 一幹
春炬燵眼鏡外して言ふ本音 綾女
午鐘打つからくり人形うららなり 篤樹
片栗やあかねにかすかうなずきぬ 盛人
雨の中左近の桜咲き始む 純栄
定例句会 2017.2月
◇宏光作
梅白し隠るともなく昼の月
椋鳥の先へ先へと雨水かな
梅満開垣に子供の靴干され
◇宏光 特選
きさらぎの梢に細き月のぼる 純栄
料峭や多摩源流の石荒き 麻紗
立春の夕波眺め芭蕉像 純栄
当日作品
盆梅や月日巡れる路地暮らし 一幹
山門に会釈し潜る梅真白 綾女
安房二月コーヒー店に花あふれ 一木
春めくや膳に添えたる京干菓子 麻紗
次回は2017年3月」18日予定です
定例句会 2017・一月 定例会
◇宏光 特選
残業の差入れに買ふ太鼓焼き 麻紗
初詣してより若手歌舞伎かな 純栄
初稽古足の運びの軽やかに 麻紗
遠来の友をもてなす七日粥 純栄
羊羹の厚切りが好し冬籠 篤樹
◇普通選
輪になりて踊る園児のどんど焼き 篤樹
白息やバス待つ列の殿に 麻紗
足音はヒールの美女か寒の闇 綾女
国技館相撲櫓に冬日燦 綾女
書初めの息詰め書くや一の文字 一木
アイロンかける二日早 麻紗
◇宏光 特選
泰山木ひらくや友の眠る寺 麻紗
副都心を洗ひ切るかに大夕立 麻紗
特選
花の種いただいて辞す辰雄邸 純栄
定例句会 2016・12
◇宏光 特選
川流れ小鷺群れ飛ぶ京小春 純栄
淡々と古希過ぐ月日帰り花 一幹
白神の倒木沈む湖澄めり 一木
天心に冬満月や峠茶屋 篤樹
表札に残る父の字冬うらら 綾女
隠沼のほとりを灯す冬紅葉 麻紗
互選句
貸しボート繋がれてゐる小春かな 宏光
歳晩や水路を狭め舫い船 一幹
針と糸使ふ半日一葉忌 純栄
木漏れ日眩しき小径赤のまま 麻紗
つくばひに唯知足石蕗の花 篤樹
遠目にも忘れ去られず烏瓜 盛人
追伸は一句さつきの帰り花 一木
居眠りてあわてて降りる暖房者 麻紗
ななかまど身の引き締まる登山口 盛人
紅葉山背にして五百羅漢かな 純栄
手相見の一灯揺らぎ歳の暮 一幹
鳥は木に人は木椅子に日向ぼこ 宏光
手袋を前歯で脱ぎて鍵探る 綾女
冬日向不老の井戸を覗きこむ 綾女
家事もまたただごとならず神無月 宏光
太極拳舞ひし浜辺や小春凪 麻紗
冬麗女医は長生きすと言ひき 盛人
茶の花や利休古印の干菓子食べ 純栄
岨下は学舎の道冬苺 篤樹
あと継ぎのなきまま老ゆや冬耕す 宏光
当日は雨だったが、やがて午後には小康を
得た。俳句には、生憎の天気はないのである。
都心に、かくのごとき緑の森と広場
が残されたことに驚きと感謝の念を覚える。
互選
菊花展華やかにまた寂として 純栄
鈴懸の寒九の雨の千駄ヶ谷 一木
実南天鋭くなりぬ鳥の声 一幹
己のみ揺れてゐるなり枯柳 篤樹
百態の貌をさらして菊花展 盛人
山茶花の庭園に猫入り込む 盛人
団栗をひろふ小径や一茶の忌 麻紗
時雨傘たたみて楽羽亭に入る 純栄
鈴懸の樹容冬天覆ひけり 一幹
隠沼の蒲の荒びや冬の雨 一幹
副都心ビルを背に紅葉照る 綾女
友の肩楓紅葉の舞ひつきて 盛人
帰りまた見上ぐ十月桜かな 麻紗
新宿の町騒よそに冬桜 純栄
雨に濡れ石蕗は黄色を輝かす 綾女
白菊を月に見たてて菊花展 一幹
摩天楼の下の日だまり冬はじめ 一木
冬の蜘蛛雨後繕はず身じろがず 一幹
燦々と紅葉曼荼羅八幡平 純栄
大銀杏散るにまかせる力塚 篤樹
徐に雨後を繕ひ秋の蜘蛛 一幹
樹木医の幹に耳つけ風さやか 綾女
接岸は白い巨船や月の夜 一木
宏光 普通選
秋澄むや鳥海山は海に映え 一木
賢治の地童話めきたる藁ぼっち 純栄
池の面に枝を延ばして新松子 綾女
鴨眠る蓬莱岩を後縦 一幹
互選句
露天の湯満々として月の宿 一木
水澄むや小鳥説き声発す 宏光
見えてゐる人声遠き秋日かな 宏光
欠け石を財布に一つ温め酒 篤樹
朝鴉谷戸をとりまく露の山 宏光
仏壇の酒を下して菊膾 綾女
紅葉狩遠く近くに南部富士 純栄
盤上の次の一手に暮れ易し 一幹
朝寒の味噌樽天地返しをり 一木
◇ご案内
月例会句十一月十九(第三土曜)
吟行会
十一時am 新宿御苑:千駄ヶ谷門集合
新宿御苑内の武蔵野の面影のビオトープ
を主に巡ります。
◇宏光 特選
まほろばの宿や独りの月見酒 麻紗
溶岩の狭間に高き富士薊 篤樹
空堀の風に吹かるる秋の蝶 篤樹
◇会員 互選句
秋草の吹かれ現はる峠径 一幹
無月良し羽二重団子食ふべかり 純栄
明方の血圧高し紅芙蓉 篤樹
窓開けて月と添ひ寝や独りの 夜 綾女
泳ぐ子に塩の利きたる大むすび 一木
秋風や欅はおのが齢忘れ 宏光
秋暁や天窓を打つ雨の音 純栄
子規庵の縁先あふれ秋の草 一幹
山も湖も霧の機嫌にまかせをり 純栄
みづうみの波荒くなり草の花 宏光
本殿の階にあり蟬骸 盛人
子規庵の糸瓜つくづく縊れゐし 一幹
石像も聞いてをらむか蟬の声 麻紗
海を出ていざよふ月の山恋はむ 宏光
産土神の杉の秀見ゆる無月かな 宏光
こぼれ日を啄む雀敬老日 一幹
強力の仕事納や草紅葉 篤樹
上州の風なき日和葡萄狩 麻紗
誰も居ぬ鬼城草庵秋深む 純栄
法師蟬齢を惜しみ鳴き続く 一木
鯖雲の動き見てゐる余生かな 綾女
出来秋のもの地方紙にくるまれて 宏光
でこぼこの梨の安売り甘かりし 綾女
甘藷一連かざす幼の瞳美し 篤樹
吉丁虫踏まれてもなほ地に光 盛人
2016年8月
◇宏光 特選
雨戸繰る音のきしみも秋湿り 麻紗
ざざ降りの雨に浮かびし大文字 純栄
十方へ松の気迫や夏果つる 一幹
霧まとひ霧の山門開けにけり 盛人
◇会員 互選句
底紅や立膝したるチマチョゴリ 篤樹
蜩や庫裏の大釜湯気放つ 一幹
飛蝗飛ばして人の世を少し避け 宏光
山蛭に刺されて辿る行者道 純栄
隠沼の子沢山なる鬼胡桃 一幹
新宿の小さき園や蝉時雨 麻紗
蜻蛉の眼と老眼と対峙せり 宏光
夏惜しむ丹後の観音さま仰ぎ 純栄
翡翠のよぎる保津川下りかな 純栄
朝の日を頬にうくれば露草も 宏光
語部の女老いたり原爆忌 綾女
抜かれても抜かれてもなほ藪枯し 篤樹
老楽や瀬戸の茗荷に花の咲く 篤樹
台風の余波の雨なる句会かな 麻紗
凌霄の零れる棚に憩ひけり 綾女
鬨あぐる三峰山の山法師 盛人
大雷雨画狂老人棲みし町 一幹
三日月や二匹釣れたる金魚下げ 一木
姉呼べばつくつく法師鳴き出しぬ 純栄
母を恋ふ父の日記を曝すなり
七夕やもののけ達に逢ひにゆく 綾女
のうぜんや帰りうながす鳶の笛 純栄
この山路右か左か山法師 篤樹
曳船の水脈炎やしゆく大西日 一幹
葭切やひとりとなりし下校の子 宏光
北斎の天狗草紙のはえ過る 綾女
梅雨深き行人坂の羅漢かな 麻紗
畦道の草刈り刈草にほう盆の入 宏光
ラッパーの黒人青年日傘さし 純栄
泰山木ひらくや友の眠る寺 麻紗
炎天や老体おのが身を思ふ 宏光
旱梅雨運河の空に赤き星 一幹
土牢へ片白草に導かれ 純栄
捥ぎ取りてトマトに重さあると知り 篤樹
七月のかがやく樟の繁りかな 宏光
鳥通ふ四万六千日の水路かな 一幹
七夕や鶴一心に折る少女 盛人
岩たばこかけこみ寺の岩壁に 純栄
朝顔の下町が好き路地が好き 一木
扇子閉ず百鬼夜行の絵図の前 綾女
夏空へビルの鉄骨組み上がる 麻紗
副都心を洗ひ切るかに大夕立 麻紗
豪雨後の木々の雫や盆なかば 宏光
路地裏に古る歳月や金魚玉 一幹
冷房や三下り半の展示室 純栄
くちずさむ声やはらかに夏薊 篤樹
言い訳をして旅に持つサングラス 一木
六月十一日、午前十一時集合JR日暮里駅
。折しも梅雨の晴れ間の片陰を拾いながらゆく熱い日盛りの日であった。早速、駅近くの
コンビニエンスストアで握り飯と飲み物を準備、男性は即、缶ビールを飲み干す。
『葷酒山門に入るべからず』を無視して最初に駅近くの『本行寺』と『経王寺』の山門に入る。山門には今でも、維新戦争の弾痕が残る。本行寺の境内には一茶『陽炎や道灌どのの物見塚』と山頭火『ほっと月がある東京にきてゐる』の句碑が建つ。境内は狭いが紫陽花はもとより、白雲木は実をつけ、榊は花盛り、四季折々に俳人を楽しませるに十分な草木にあふれている。俳句の投句箱が置かれ競詠の賞を設けている。俳句に理解の深い寺の在りようが伝わって来る。
経王寺の大黒天は日蓮上人作の大黒天が祀られている、比較的静かで、座る場所もあるので、一同ここで握り飯をほうばることとした。
寺を辞するとき、山門の裏に目高の鉢が置かれていて、宏光さんは『禅林の目高に自在あるならん』とすかさず一句に仕立てる。
経王寺の真向いの路地に入ると黒々と朝倉彫塑館の建物が見えて来る、この界隈から寺町の始まりであり、大小の寺の山門を連ねる。
山門ごとに宗派と紋章を掲げている。但し、寺によっては庫裡の方へ余り深入りすると注意を受けることとなる。昨今は寺もプライバシーと防犯に留意しているようだ。
谷中は江戸の大火で焼失した寺が疎開、移転させられ来て今日の寺町を形成したものである。その後、関東大震災にも、昭和の空襲にも、殆ど焼失せず残っていることを考えると、まことに風向き地の利を立証したこととなる。
谷中は、近くに芸大があることなどから、職方と芸術がコラボした街並みを形成し始めている。外国人に人気のある町のひとつとなり、住みつくひとも多い。
日暮里から西日暮里へは所謂『日暮里崖線』
を辿る。この道行に養福寺仁王門あり諏訪神社あり、富士見坂あり、高村光太郎の卒業した小学校の記念碑ありと、いつの間に到着してしまう。
あらかじめ句会場を予約設定していないので、西日暮里駅前の喫茶室『ルノアール』で
珈琲を飲みながらの句会と相成った。当日句
は、『山歴下町』の検索でホームページをご覧いただけたらとおもう。
唱名や藤蔓空にあそびをり
取ってやりたしぶらさがる竹の皮
禅林の目高に自在あるならん
◇宏光 特選
泰山木の花や露座仏合掌す 純栄
木洩日の天心堂や四葩咲く 麻紗
傘さして仰ぐ墓苑の花柘榴 麻紗
み仏よいでてあそべよ青葉光 ふみ子
朗々の僧の読経や実梅落つ ふみ子
◇宏光並選
鐘一打一打に蟻の走るなり ふみ子
瑠璃とかげ谷中墓地へと逃げ込んで 純栄
自堕落先生の碑や山梔子のよく匂ふ 純栄
鉄舟の墓にこぼるる花南天 麻紗
堂裏の墓地を彩る花柘榴 綾女
寺町のいまを盛りの濃紫陽花 ふみ子
夏の蝶鍼灸院の白き壁 あや女
◇互選句
下町のどの路地行くも濃紫陽花 麻紗
彰義隊籠りし寺や花榊 一幹
弾痕を残す山門梅雨の寺 綾女
紫陽花の青色染めしガラス窓 一木
街辻の片陰乏し海鼠塀 一幹
花柘榴墓域にありぬ袋小路 一幹
七変化ただ咲くばかり富士見坂 綾女
睨み合ふ阿吽の像や夏日燦 綾女
富士見坂行く羅の若き僧 純栄
谷中坂女盛りや日傘さす 一木
◇宏光作
藤の蔓あそぶ薄暑の毘沙門天
濠かすめ神楽坂へと夏燕
また次の雲を見送り山法師 一幹
宮出しの町会総出神輿かな 一木
クラス会友手作りの粽
青梅や石垣粗き汐見坂 一幹
黄金週間ただ山々を見て過ごす 純栄
曇天へ河骨一つ花を挙ぐ 麻紗
藤見むと渡るや赫き太鼓橋 綾女
定例句会 2016・四月 定例会
据ゑられし石にこぼるる花馬酔木
古池やひそと青木は花かかぐ
特選
花の雨琵琶湖疏水を遡る 純栄
◇互選句
菜種梅雨上着出したり仕舞ったり 綾女
旨き国や柳の芽吹き初む 一幹
告げられて車窓に仰ぐ春の虹 麻紗
花の散る銭形平次の石碑に 綾女
花水木煉瓦造りの鍼灸院 純栄
をのこらへ花の雪洞点りたる 純栄
◇宏光作
玄関に安房よりの花前彼岸
つくづくと一人の夜道沈丁花
亀鳴くを隣の亀の聞いてをり
◇宏光 特選
菜の花の一本道や潮香る 純栄
貝寄風や松籟を聞く岬径 麻紗
◇互選句
厨房の隅に蜆の息吹かな 綾女
卒業子ビーチバレーに興じをり 純栄
青き踏む小室山より富士を見て 麻紗
貝砂の径の続くや彼岸西風 一幹
潮けぶる浜大根や利休の忌 一幹
春光や白内障の手術済み 綾女
売出しの幟ひらめく涅槃西風 麻紗
独り酒淋しく非ず春の月 綾女
田螺鳴く薄れゆきたる世の神秘 一幹
ついに杖買うて労る彼岸西風 純栄
春愁や話の合はぬ人とゐて 麻紗
この坂の前もうしろも朧かな 宏光
鰆東風漁船出払ふ昼下がり 一幹
探しもの一日暮るる日永かな 純栄
鴨引きてよりの水面を波走る 宏光
春空へ吹く老人のトランペット 麻紗
花大根三浦の浜のとの曇り 一幹
遥けしや春の雲にも別れあり
二の午や昼過ぎてより風の出て
筆塚へ天神の梅花散らす
探梅行小さき祠に掌を合わせ 純栄
宇宙にもさざ波ありと亀鳴けり 一幹
厨房の隅に蜆の息吹かな 綾女
ひとひらの雲を遊ばせ山笑ふ 純栄
葦焼きて星が星生む夕べかな 一幹
べい独楽を回す親子や冬ぬくし 麻紗
切通し名越の先は春の海 一木
手を握るだけの邂逅風光る 綾女
フィリピン十九の春の遺影持つ 盛人
鎌倉のいくさ伝へむ冬の鳶 一幹
奥秩父壁となりたる大氷柱 一木
鶴を折る慰霊の旅の初春かな 盛人
春隣り遠出を誘ふ駅ポスター 一木
合挽きを捏ねてをるなり水温む 綾女
一叢の水仙にある日和かな 純栄
堰越の水の韻きや蕗のたう 一幹
寒卵産み落としてや怪訝顔 盛人
小春日や空母碇を下しをり 一木
芽吹靄鴉の声の獣めく 一幹
友見舞ふ寒紅うすく引き直し 麻紗
初御空杜を出て来る鈴の音
寒夕焼富士近づけず遠ざけず
寒鴉空に摑まるところなし
善哉で祝すひとりの女正月 綾女
屠蘇を注ぐ手元へ山の日が射して 純栄
雪吊の秀に入れ替り鳥の影 一幹
◇普通選
松過ぎやまた始まりぬ医者通ひ 綾女
切株の年輪薄れ冬萌ゆる 一幹
寒雀都会に生きてやや丸め 一木
まつぼっくり三個付きし松を買ふ 盛人
母の齢越えて祝ふや節料理 綾女
淑気満つ川の流れは滔々と 綾女
寒の水飲むや参道登りきて 麻紗
霜の朝かすかに聞こゆ弦の音 一木
寒星や我は生涯一書生 純栄
ぽかぽかの陽気賜る三が日 麻紗
喜びも苦悩もほのと仏の座 盛人
空の機嫌包み隠さず大冬木 一幹
去年今年煌めく星座仰ぎ見て 純栄
若水や双手に福のせ給ふ 一木
◇宏光作
恍惚と半纏木の落葉かな
足元で止まる落葉を拾ひたり
綿虫の藁廂より旧道へ
◇宏光 特選
息白く石庭の石数へけり 純栄
紅葉散る山社より湖展け 純栄
路地裏に枇杷咲き初めし一葉忌 綾女
◇普通選
枯芦や阿寒連山遥かなる 麻紗
討ち入りのありし町なり年の市 一幹
聖堂や散りたるままの楷黄葉 麻紗
寂び寂びと御所の紅葉は雨に濡れ 純栄
光背は銀杏黄葉や孔子像 麻紗
飛ぶ星の日毎数増すそぞろ寒 一木
松多き庭園にあり実千両 盛人
◇宏光作
山茶花の散りゆくままに日の暮るる
人の世をつとに見し松菰巻かれ
水鳥の夢に寄するや波の音
◇宏光 選
将軍の庭やつつじの帰り花 純栄
冬たんぽぽ咲くや潮入浜離宮 盛人
冬鳥の声透き通る空の紺 一幹
渡りきてビルを間近に眠る鴨 純栄
山茶花のかくも散りたる波卿の忌 綾女
小春凪船につきくる鳥の影 綾女
秋色の川を下りて芭蕉庵 一木
また次の落葉しぐれや潮満ち来 一幹
◇当日作品 互選句
枝低く張り出す松も色変へず 麻紗
青空に冬の桜を映しをり 一木
冬凪に無垢の翼を休めけり 一幹
どの松も菰巻き苑は日本晴 綾女
白鷺の歩むや小春の浜離宮 盛人
櫨紅葉潮入池を見渡して 純栄
白鷺佇つや岸辺の石蕗の花 盛人
小春日や潮入り水のぐんぐんと 綾女
競り果てし河岸や漂ふ都鳥 一幹
庭園の抹茶をすする石蕗日和 麻紗
雪吊りの松や鴉声のひびくなり 綾女
櫨紅葉天辺にあり御亭山 盛人
潮風や菰巻の松遠近に 純栄
陽だまりの石を椅子とし冬ぬくし 一木
松多き名園に映ゆ櫨紅葉 麻紗
船笛の届き離宮の鴨場かな 一幹
◇作品から〜
○小春凪船につきくる鳥の影 綾女
鷗や海猫は船につくゆく習性がある。漁船につけば、
雑魚の相伴にあずかる恩恵を受けるし、
観光客の投げ餌をキャッチする恩恵にも浴す。
季語の小春凪が、まことに据わりがよく、
この景を活き活きと描くこととなった。
定例句会 2015・十月
◇宏光作
先導につき水の上の渡り鳥
下町の空を沈むる秋の水
亀島や水面に揺るる初紅葉
◇宏光 特選句
虫すだく夜目にも潮の動きけり 一幹
泡立草はびこる多摩の河原かな 麻紗
◇宏光 普通選 互選
紙飛行機飛ばす女や天高し 綾女
湾岸の街の中天古望月 麻紗
森抱くひやうたん池や秋日濃し 純栄
湯火照りを風に晒すや星月夜 綾女
単線の終着駅や刈田なか 一幹
秋興やスエコザサの中牧野像 盛人
敗荷や少し風ある源氏池 麻紗
秋高し地下鉄出口チンドン屋 一木
半眼に紅葉とらへって坐禅かな 純栄
◇互選句
川辺りの小径歩まむ秋日和 純栄
秋麗や水金火星見える丘 一木
酔芙蓉染まる刻待つ潮照り 一幹
鎌倉の路地や夕べの酔芙蓉 麻紗
飯桐の実の高くして雨払ふ 盛人
賞愛く人受けぬ人にも紅葉燃ゆ 純栄
水澄むや通行止の神の橋 麻紗
落ちるだけ落ちて銀杏匂ひけり 綾
居間の隅母の形見の籠枕 一木
◇作品から〜
○先導につき水の上の渡り鳥 宏光
長旅をして来たばかりの水鳥の中にも、
もう既にリーダーシップとイニシャティブ
が芽生えている。一族を束ね守ってゆく
「自然の規範が」整っているのだ。渡り鳥の生態を活き活きと写しとっている。